苺は何故冬に食べられるようになったのか?

 12月に入るとクリスマスツリーやクリスマスケーキ、クリスマスプレゼント等の宣伝広告で正にクリスマスシーズン到来である。
 8年間住んだドイツでは、クリスマスの4週間前の日曜日から4本のロウソクを中央に据えたクランツを飾り、日曜日になる毎に1本ずつロウソクを灯していく。また、アドベントカレンダーというものがあり、12月1日から25日まで 都合25個のポケットをもったカレンダーにチョコやキャンディーを入れ、それを子どもたちは毎日楽しみにしながら食べていく。キリスト教の国であるので何か厳かな気持ちになりながらクリスマスを迎えたものであった。
 日本はキリスト教を信じる人はさほど多くはないが、結婚式はキリスト教(チャペル)でというのも随分多くなった。宗教に関係なく儲かると思えば何でも利用する日本の商業ベースの凄さを感じる時期である。
 さて、今は苺の盛りかと思わせる程、スーパーの広告を見ると栃木産の苺1パック480円売り出し特価が見られる。20年程前は、苺は当然春から初夏にかけてのものであり、冬の時期など考えられなかった。しかし、クリスマスケーキの代表作である苺ケーキ(ショートケーキには苺が付きも)が人気を博していたが、当時はその苺の大部分をアメリカ・カリフォルニアからの輸入に頼っていた。しかし、それが儲かるとのことで、日本の農家もハウス苺を作り始め、クリスマスのこの時期を目がけて生産し、今では苺の盛りがこの時期になってしまったような錯覚さえ起こすほど栃木や福岡、静岡などの苺が市場に出回っている。
今年は石油高であり、特に苺の出荷最盛期の今月に石油値上げがあったので生産農家は大変だと思う。
 最近は野菜や果物から季節感を感じることは非常に少なくなった。金さえ出せば、いつでも何でも食べられるといった感じで、私が小さかった頃は、冬と言えば雪降り前に収穫した白菜や大根キャベツなどを雪の下から掘り出して食べるのが野菜、そして野沢菜やタクワンといった漬け物が冬の食べ物であったが、今は、国産のピーマンや茄子、インゲンをはじめアメリカ産のブロッコリーなども店頭に並んでいる。
 資源のない国、適地適作、自給自足、地産地消を考えることで、エネルギーの節減、二酸化炭素発生の抑制、新鮮で栄養価の高い、安全なものを安価に食べられると同時に、周囲の農地の保全、そして農業振興に一役買えるはずなのだが、人間の欲:食欲とステータス欲(名誉欲):により、手に入らない時期に高い金を払って、栄養価の低い、環境を無視した作付けや流通方法により、作られた食料を消費している実態をよく把握し、今後の食のあり方を考えるのも『食育』の大切なテーマではないかと思う。