施しより仕事を!

 先日、精神障害の若者と話をする機会がありました。
 彼は「小さい時から両親に疎んじられて育てられた。」「学校の先生も特別視して、自分の言うことをきちんと聞いてくれなかった。」「現在仕事がなく自分がフラフラしているのは社会、環境がおかしいからだ!」と捲くし立てる勢いで私に話しました。
 また彼は「両親の下を離れ、現在は母方の実家の爺ちゃん婆ちゃんの所で、治療を受けながら暮らしているが、きちんとした職に就けず、障害者の作業所へ行っても、時給100円では通所の交通費すら出ないし、弁当代も出ない。馬鹿馬鹿しくて数日で辞めてしまった。祖父母もこんな自分を邪魔にしているので、現在市営住宅の入居を希望している。」と話していました。
 現在、法律で定める障害は「身体、知的、そして精神」の3つがあり、障害者といわれる方は、全国で600万人を超える数とのことです。
 特に精神障害は、生まれてこの方、家庭や学校そして社会における人間関係のつまづきが原因で発生する後天的な障害者も少なくありません。
 効率性や均一性ばかりを追求し、そして個性を余り認めたくない現代社会においては、少しでも人と違った行動を取ったり、発言をしたりすれば、直ぐに除外されてしまいます。
 加えて、親子、兄弟などの家族関係、そして学校での友人関係、社会に出てからの人間関係が希薄になった今、悩みや苦しみを相談する相手も無く、一度社会のレールから脱線してしまうと、あるレッテルが貼られてしまい、「常識社会と云われるレール」に戻って来るのが本当に難しくなっています。
 加えて、戻ったとしても社会が受け入れてくれないばかりか、まともな仕事、そして、その仕事に対するまともな対価すら支払ってくれないのが現状です。
 彼の言うように、例え障害者の年金を貰っていても 時給100円、1日数時間の労働では、自立できる訳はありません。
 残念ながら障害者が関わる仕事は「仕事をさせてあげているのだから安くて当たり前」といった間違った常識が通用しているので、社会での「自立、自立」という掛け声はどんどん大きくなりますが、実際、その自立を支援してくれるような社会環境ではありません。
 精神障害の彼の話を聞いていると、障害者はどんどん社会のどん底に落ちて行き、その原因は、周りの人たちにあるのだ!っ社会にあるのだと考え、人を憎み、そして社会を否定してしまい、終には自己破滅に至るのではないかと大いに心配しました。
 どうにか助けられないか?と思いますが?
 障害者の年金や福祉の充実も大切ですが、まともな仕事、そしてそれに対するまともな対価を与えることが、先ず社会の役目ではないかと思います。