地方創生はNPOが主役

 2月4日に開催しました『地域づくりフォーラム IN ながおか』で挨拶文を掲載しました。
『経済から環境へ!文明から文化へ!』
『知恵という記憶を記録し、次世代に記憶として残すこと』
『大きなことでなく、小さなことを的確かつ迅速にやること』
『地方創生は、NPOが主役』です。
『経済から環境重視へ!文明から文化を大切に!』
戦後70年来、日本社会は経済優先で進んできました。その中で形成された都市社会は、正に文明社会、知識の象徴であるコンピュータが大活躍している社会です。
一方、里山地域には何百年、何世代もかけて培われ、守り続けられた環境、伝統、習慣、風習そして地縁があり、それらは地域の文化いわゆる地域の知恵と云えると思います。
現在、利便性が優る都市生活を基準とする物差しで測れば、当然、里山での生活は不足するものが多々あります。しかし、生活の質という物差しで里山での生活を測ってみると様々な点で優位性が見られます。
近年の度重なる災害で判明したのは、公助に頼らなければどうにもならない都市社会の脆弱さ、逆に11年前に発生した中越地震の時、里山地域は、災害発生時、行政等の支援、『公助』に頼ることなく地域の力『共助』で切り抜けてきた素晴らしい実績があります。
持続可能な社会を形成して行く際、今考えなければいけないは何か、それは『これまで里山社会が培ってきたコミュニティも含めた環境重視の思想、そして文化・知恵を継承してきた哲学』を大切にすることではないかと思います。

『知恵という記憶を記録し、次世代に記憶として残すこと』
私達UNEは、村の長老の頭の中にある知恵や記憶、村人のみが知っている情報を誰もが容易に見ることができ、理解できるようなデータとして記録することが必要と考えます。また、それを発信することで、他所者や若者がもっと容易に村に入り活動出来るような環境を整備することを目指し今回のGISを活用した事業を実施しました。
村の方々が他所者との交流を通して意思疎通を図ること、そして現代社会で否定されがちな村社会や古き良きものを再認識することで、村人も里山での自らのライフスタイルに自信を持ち、それらを発信することが地域の活性化につながると思います。

『大きなことでなく、小さなことを的確かつ迅速にやることが活性化!』
「トンネルを作って町にもっと簡単に行けるようになれば、若者も村に残り、村はすたれない?」「新幹線が出来れば、多くの観光客がやって来て地方の活性化が図られる?」などということが今もなお信じられています。 

交通網をはじめとするハード面の整備、いわゆる「物の豊かさ」で地域の活性化が図られるという幻想から早く抜け出し、ソフト面、いわゆる「心の豊かさ」の充実に力を入れるべきかと思います。
里山地域での生活には「質の高い食と住」があることをしっかりと認識し、今、地域・村が抱える問題は何なのか?それを行政任せ、人任せにするのではなく、住民自らが、これまで培ってきた知恵と、地域で育んできた習慣、伝統、文化を通して解決すべく村人が一致協力することが大切です。
そして、里山に興味や意欲を抱く他所者、若者を積極的に受入れ、そして日々の生活において支え合い助け合いの精神をもって協働することが地方創生であり、地域活性化であると思います。
 私達NPO UNEがまずやれることは、素晴らしい知恵のある高齢者の方々の知恵を記録し、見えるように可視化し次世代へバトンタッチをすることです。その作業をする時間は然程残されていません。若い人たち、出来る人達の手を借りて、記憶から記録へ、そして更に、それを記録に残す作業に関わった若い人たちの記憶に残す作業を急いでやらなければなりません。

『地方創生はNPOが主役』
地域の活性化施策は、これまで政治行政主導で行われ、また、政治行政主導の施策であったので地域も容易に受け入れてきました。
一方、新しい活動を目指す他所者やNPOでは、なかなか地域に溶け込むことすらできず、また財政的に脆弱なNPOでは活動の継続が出来なかったのも事実です。
しかし、多種多様化する価値観、様々なニーズをもった市民が混在する現代社会において、いの一番に「公平性・平等性」が求められる行政では、人口数十人、数百人しか居ない、それも高齢者しか居ない里山に多額の税金を投下することに対するコンセンサスは得られません。
 公共性を担保しながら政治や行政よりも柔軟かつ小回りが利き、そして迅速に対応出来る。大きなことではなく、小さなことでも、実際困っている人達のために動くことが出来る。
それらを積み重ねるNPOの活動こそが、今の過疎化・高齢化の進む地域にとっての「安心・安全」ではないかと思います。
 そういった意味で、今回参加いただいておられる行政関係者の方々からは、NPOの活動の役割と重要さをより高く評価いただき、しっかりした活動が出来るよう財政的にも政策的にも積極的に支援していただきたくお願いいたします。

 平成27年度、UNEは、里山に住む、そして里山に集う人達の幸せ、いわゆる「里山福祉」を農園芸活動や6次産業化の推進を通して実現することを年度目標に掲げ、せめて私の世代が活躍する間は里山を維持し、そしてその里山を良き形で次世代へバトンタッチすることを目的に掲げ、今年を「地方創生元年」と位置付け頑張って行きたいと思います。