公共工事の適正価格

 昨今建設工事等の低入札が話題になることが多い。一般に低入札は、これまで税金が無駄遣いされていたと思っている国民にとっては、歓迎されることであるが、昨今の低入札(設計価格に対して70%台で落札される)は、現場で大きな問題を起こしていることも国民は理解して欲しい。
建設業界はこれまで旨い汁を吸ってやってきた。入札価格に関しての談合や話し合いが行われ、不当に高い価格で落札してきた。というような建設業界、そして公共事業に関して抱く国民的なイメージはマイナス面が多いかと思う。
しかし、果たして不当に高い価格なのだろうか?
 役所が定める適正価格とは、自らが設計する設計価格だと思う。
例えば1つの工事請負価格を設計の積算を公(役所)が行い100万円でやってもらいたいと考えた価格が一つの適正価格であると思うし、その額が議会で審査される予算の額となる。 
それを98万円や99万円で落札すると「不当に高い価格だ!談合があったはずだ!」とマスコミは断言し叩く傾向が多い。
 しかし、設計かかくよりも安い価格の訳であるから決して不当な高い価格ではないはずである。
現実、公共工事を行う場合の設計単価は公表され、積算ソフトなどは市販されており、そのソフトに具体的な数字を入れれば当然積算金額は出て来る。設計をする役所と同じソフトを使えば、ほぼ同じような設計価格は出るはずである。
つまりそれを落札するためには、競争相手である他社より幾ら低い価格で「札」を入れるかに掛って来る。
高落札ではマスコミに叩かれる、清廉潔白を示す上でも落札するには、それなりの「札」を入れなければならないと各社の営業マンはがんばる。
そのためには、材料や機械代がある程度決まっている中で、何を削るかというと工事代金の概ね15〜25%で一定の率で参入(加算)することが認められている「諸経費 注?」を削るしかない。
さて、先日新設された道路の付帯工事の状況について、市役所の担当者と地元関係者とで現場立会し工事の後の処理等について地元から様々な要望が出された。市側は「既に工事は完了しており、後処理を行うためには経費が必要なので直ぐに対応することは難しい!」との回答。工事請負業者も経費ぎりぎりでやっているので、付帯工事についてはきちんと対応出来なかったのではないかと予想される。
「工事を請負ったのだから最後まできちんとするのが役目」と云う地元の発言も理解できるが「低入札の昨今、赤字を出してまでも地元の要望に対応させることも出来ない?」と考える市役所担当者の考えも理解できる。
何れにしてもきちんとした入札競争をさせて公共事業費を削減しようという考え方も理解できるが、先ずは今の設計単価、積算方法、そして項目等についてきちんと検証し、設計価格のあり方、そして最低制限価格の設定などについて早急に検討しなければ今後ますます、工事完了後の問題が発生するのではないかと懸念される。


【注:諸経費】
建築設計業務等の履行にあたって通常必要となる直接人件費以外の経費であって直接経費と間接経費で構成される。
直接経費は成果図書の印刷製本費、複写費、打合せのための会議費、交通費等建築物の設計等に関して直接必要となる費用の合計とする。
間接経費は、建築士事務所を管理運営していくために必要な人件費、研究調査費、研修費、減価償却費、通信費、消耗品費等(直接人件費、特別経費及び直接経費を除く。)の内、当該業務に関して必要となる費用の合計とする。