入管法改正に伴う海外農業研修生受入事業の危機

 現在私が理事を務めている(社)新潟県国際農業交流協会は、昭和58年 1983年以来26年間、毎年5名〜7名のタイ、インドネシアからのASEAN農業研修生の受入を行って来ています。実習した研修生は母国において地域農業の担い手として大活躍しています。
 しかし、本日新潟市で緊急理事会が開催され「改正入管法における外国人研修・技能実習制度の見直し」が実行されるため、来年度以降の本事業の継続が危機に瀕しているとの報告がありました。
 2008年の日本における研修生・技能実習生の入国者数は101,879人で、外国人研修生・技能実習生の登録者数は191,816人にもなっています。
 この制度に対する世間の評価は、『国際貢献・技術移転』と言った成果よりも、『研修生・技能実習生自身が人権侵害等の被害者になる』といった問題が発生する等、不適正な受入や問題事例が後をたたないのが現状であるとの報告があります。
 実質外国人研修生・技能実習生は低賃金労働者として扱われていること、そして賃金不払いや長時間労働などの労働関係法規違反が発生していること等の様々な問題が発生しているため、今回入管法が改正され、研修生・技能実習生の受入に関しては、最低賃金が適用され(新潟県では669円/時間)、また週の労働時間も40時間が適用されるとのことで、現在の受入農家の受入条件と比較すると研修生に支払っている小遣い:手当が倍以上になり、昨今の農業所得が低迷する中、これ以上農家の負担が大きくなるようでは受入事業を断念せざるを得ないとの状況であることが報告されました。
 我々アメリカやヨーロッパ等の海外の農家で実習してきた者達が、恩返しの意味で、今度は海外の農業研修生を受入、日本の農業技術や文化を学んで貰おうとの発想から始まったのがASEANの受入事業です。
 農業者同士の草の根交流は、武器を用いない真の平和交流であると思い、これまでボランティア精神で真面目に一生懸命やってきているのに、胡散臭い金儲け主義の事業と一緒にされ、一括法律で規制されてしまいそうな現状に大きな憤りを感じます。
 現場を知らない?国会議員?中央官庁?が改正した入管法「悪きを挫き、佳きを助けるのが正義であり、国家の責務ではないか?」と思っていますが、残念ながら悪貨が良貨を駆逐する。悪い行いが良い事業を潰してしまう状況となっています。
 新政権になったので、是非、この改正入管法を見直し、同時に現場における適正な運用をお願いしたいと思いますが、縦割り行政の中央政府では、外務省、法務省農林水産省厚生労働省何処にお願いに行ったら良いのかすら分かりません。
 事業を中止することは国際問題であり、また、これまで受入してきた農家や組織にとっても大きな問題です。
 今は真面目な事業が継続できるよう只々祈るばかりです。