我々の食について

 昨年から今年にかけて、食を取り巻くスキャンダルである食品偽装、毒入り餃子、汚染米など農や食の問題はひっきりなしに報道されてきました。
 しかし、それはほんの氷山の一角であり、見つからなければこれ幸い、見つかるまでやっていて、見つかったら謝れば良い。そんな考えを持っている関係者は少なくないと思います。
 報道関係者の前で長机に3〜4人座って正に針の筵の如く、様々な批判的な質問がなされ、只「済みません、分かっていてやりました。」との弁明を繰り返し、最後には全員起立で「申し訳ありませんでした!」との一礼と同時に「パシャパシャパシャ」というシャッター音が響き渡る映像は、既に飽きるほど見せて貰いました。
 これは正に現代の「拝金主義」「利己主義」が引き起こした現象なのかとも思いますが、これまで現代人のモラルが低下し、そして食とは一体何なのか?我々日本人はどう考えているのか?疑問に思えてなりません。
 20年程前に、アメリカ サンディエゴで有機農法で野菜栽培をされていた(故)知野農場のボス知野潤三さんが訪日された折りにお話しされたことを思い出す。知野さんは「百姓という職業は、神様の仕事の次に尊い職業である。神様は人を造った。その人を育て造る食べ物を作っているのは、我々百姓だから、我々は神様の次に偉いのだ!」と言われておりました。
 知野農場は昭和27年以来毎年国際農友会の実習生を複数名受け入れて下さっており、実習面ばかりではなく、生活面全てに渡って厳しくご指導頂ける農場として有名でした。また、当時カリフォルニアの知事であった後のレーガン大統領の料理人が「知野農場の野菜を配達するように!」とオーダーしてきた時に、知野さんは「我が農場は農場での直販がモットーとしているので配達などはしない、欲しければ一般消費者と同様並んで買って欲しい!」ときっぱり言われたとのエピソードも残っています。
 食品、農産物は直接人の口に入れる物、そしてその人の体、健康を維持していく大切な資源。安全で安心できる物を作ることが天命であり、そのことが百姓の誇りであると信じ、彼の地アメリカのカリフォルニアで活躍されて来られた知野さんに敬意を表します。
 農家ばかだけでなく、一般消費者も食べ物は人を造る資源である。その食べ物がきちんとしていれば病気にかからず健康でいられる。医療費も介護費も必要ない。高価なサプリメントも要らない。つまりきちんとした物を食べることが経済的にも社会的にも「エコ」な生活、人生が送れるのだ!ということを自覚し、値段、外見、そして名前ばかりを見て買い物するのでは、何が健康に良いのか?そして健康を害さないのか?を良く判断し買い物をしなければならなく、そのためには食、農についてもっときちんと勉強しなければならないと思います。