ほ場整備事業

hiroshikaro2010-06-03

 昨晩は、私が事務局をしています地区のほ場整備協議会の年次総会を開催し、関係者20人が集まり実績報告決算、年度計画及び予算案等について話し合いました。
 昨今の米価低迷の時代に「金を出して迄して田んぼを整備する必要なんかあるのか?」と聞かれることも良くあります。
 確かに現在の長岡市に於いては、ほ場整備(土地改良)をしていない通称1反(10a)田んぼの地代(大農家等が自分の田んぼを借りて耕作した場合に支払われる代金)は、僅か12,000円です。因みに、2年前までは20,000円であったのが昨年8,000円も減額されてしまいました。
 一方田んぼの所有者(地主)は、地元の農家組合に支払う農家組合費(水利費や道普請費等も含む)は年額で12,000円となっています。加えて、田んぼの固定資産税や農協への賦課金等を支払うと、当然ながら赤字になってしまいます。
 「こんなのやってられない!」米の作付を止めて、農家組合や農協とも縁を切った方が赤字が少なくてマシだと考えるのは人情ではないかと思います。つまり、耕作しないで田んぼをほったらかしにする、所謂「耕作放棄」をする傾向がどんどん進んでいます。
 このような状況を回避するために進められているのがほ場整備事業です。大区画にすることで、作業効率も飛躍的に向上すると同時に水管理等も容易になり、耕作してくれる人いも容易に見つけることが出来ます。
 しかしながら、ほ場整備を行うためには必ず農家の負担が必要で、一般的に実施されている「県が事業主体」になって行う県営ほ場整備事業は、事業費の10%を農家が負担、「土地改良区が事業主体」となって行われる県単事業では30%の農家負担が必要となります。
 因みに平場でのほ場整備の1反辺りの事業費は100万円〜150万円程となりますので、10%負担であれば10万円〜30万円、30%負担であれば30万円〜45万円にもなります。
 これを毎年耕作者からもらう地代の増額分(ほ場整備したことによる割り増し分)で賄うとすると10年から30年分の地代に相当します。
 農家負担分の返済は、農林金融公庫等の公的機関からの低利な貸し付けを利用することが可能ですが、いずれにしても農家としては負債を負わなければならないので、ほ場整備を行うことに二の足を踏みます。
 加えて、民主党政権に代わった途端、土地改良事業費を半分に削減するという愚行が行われ、土地改良事業の新規事業がストップしてしまっている状況では、ほ場整備事業は進む筈はありません。
 古より耕作され続けてきた田んぼが、奈良時代平安時代、江戸時代、そして昭和の時代、人口増加に伴い、またこの米の生産量では食っていけないからと行って一生懸命に開墾、開拓、干拓されて造成され続けてきた田んぼが、経済的に豊かになった今、放棄され、荒れ果ててしまう状況は、正に現代社会の矛盾であり、全く理解できない現実であることを国民全体が理解しなければならないと思います。
 食べるものを作り、そして国土を守ることは農業の役割であり、大切な文化であります。農業を産業としてとらえるのではなく、文化としてアグリカルチャー:農文化として捉え、昨日書きました「奈良の仏像」の様に、現実の農業に対してより関心を持ってもらいたいと思います。